口を開こうとした。
だが、スタッフの話し声が聞こえてやめてしまう。

それを見て苦笑いをする阿部さん。
「……ごめん。それも自分勝手な質問だったね。
会社には、俺が連絡しておくから
このまま帰るといい。今、タクシー呼ぶから」
そう言うと背中を向けられる。

「…………。」
私は、黙ったまま背中を見つめていた。
阿部さんの気持ちにどう応えたらいいか分からない。

でも、あんな切ない表情をされると
胸が締め付けれそうになる。切ない気持ちになった。
せっかく心配してくれたのに……。

その夜。
この事を電話でさゆりに聞いてもらう。

『なんちゅう三角関係なのよ!?それ。
事務所の次期社長候補の阿部さんに
人気カリスマモデルのケイト。どんな逆ハーレムよ!!』

逆ハーレムって……

「恵斗さんは、ただからかっていただけだと思うんだけど、たまによく分からなくなるし。
阿部さんには、悪いことしちゃった……」

今も阿部さんの見せた切ない表情が忘れられない。
複雑な気持ちになる。

『で?あんたは、どっちがタイプなの?』

「はぁっ?」

『はぁっ?じゃないわよ。それって
阿部さんとケイトさん両方にアプローチされているってことじゃない。だったら
どっちかに選ばないといけないってことでしょう?』