「結衣ちゃんも来たし、帰ろっかー! わたしアイス食べたいー!」

「俺アイスまんが食べたいー!」

「え、なんですかそれ! 水瀬先輩詳しくどうぞ!」

「あ、アイスまんを知らないだと……!? 葵ちゃん、俺が手とり足とりアイスまんについてゆっくり教えてあげよう」

「お願いします、師匠!」



わたしたちより年上とは思えない先輩二人の子供っぽい会話を聞きながら、家路を急ぐ。


ちなみにわたしはすでにアイスまんを食べたことがある。


アイスまんとはわたしたちの学校の食堂に週に一度だけ現れるという十個限定のデザートである。

肉まんあんまんでおなじみのあの皮。温かくてふわふわな皮でアイスをつつんでいるのである。

選べるお味はコーンポタージュ、バニラ、チョコ、レモン、カレーなどバリエーション豊富である。



「そうだ、なっちゃんは部活もう決めた?」



実兄と先輩を冷めた目で見ている隣を歩く幼なじみに声をかけた。



「結衣はまだ決めてないんだ」

「うん。迷ってるのはあるけどね」



へえ、と短い返事をするとまたもなっちゃんは前を歩く二人を凝視し始める。


……質問に答えてもらってないけれど、仕方がない。

気にくわないんだね……夕希先輩と楽しそうにおしゃべりしている葵先輩が。気になるんだね。