せっかく利久くんがカッコよく見えたというのに最後に余計な一言を言うので大好きな幼なじみの名前を出してやると「またなっちゃんかよー」なんて口をとがらせている。


だけど、なっちゃんがわたしと野球してくれるって言うなら、その時は、利久くんも誘ってあげよう。


なんて思っているとげた箱に到着し、上靴からまだ綺麗なローファーへ、履き替える。


そしてわざとらしくローファーの音を立てて……なりたての女子高生の気分を味わっていた。



「じゃあ、俺自転車だから! 気を付けて帰れよー!」

「うん、バイバイ利久くん! 利久くんも気を付けてねー」



今日は歯医者があるらしい利久くんは急いで自転車にまたがり、猛スピードで漕いで行った。


漕ぐの早っ。さすが元野球部。体力有り余ってますなあ。

なんて思いながら利久くんの後姿を見ていると、急に、どうしても言いたくなって気づけば利久くんの名前を叫んでいた。



「利久くーん!! 一緒に考えてくれてありがとー!!!!!!」



まわりの目がわたしに注目していたことも気づかず、聞こえているかどうかわからないことを叫ぶ。


まあ、聞こえていなくてもいいや。なんて思いながら校門に向かって歩いていると、曲がり角直前で利久くんが笑顔でこっちを見て、大きく手をふっていた。


おお、聞こえてた。よかった。これで何もなかったらわたし、思いっきり恥ずかしい人だったな。


なんて、鼻歌を歌いながら校門まで駆けて行く。