まあ、そんな利久くんのバカな考えはともかく。
「でも、陸上部、いいかもしれないね」
「おっ、だろだろ? よし、もう入部しろ、な! 俺が書いといてやるから、陸上部って!」
なんて言いながらわたしの入部届に汚い字でわたしの名前と陸上競技部、と書こうとする利久くんの手から入部届を奪い返す。
利久くんは不思議な顔でわたしを見つめる。入らねーの? とでも言いたげに。
まあまあ、とわたしも視線で伝え、いったん、わたしの話題から逸らす。
「利久くんは、部活入ったの?」
「ん? もちろん!」
「女子水泳部マネージャーじゃなくて?」
「違うわ! そのネタもう引きずらなくていいから、そして他言するなよ?」
「はーい」
でも、わたしうっかり口を滑らせて言っちゃうかもしれない。その、利久くんが可愛いって思ってる陸上部の子とか。
なんて心の中で悪い笑顔を浮かべながら適当に返事をしておいた。
「で、何入ったの?」
「俺はなあ……奉仕部に入った!」
「……ほうしぶ?」
わたしが聞き返すと利久くんは自慢げにおう! と笑顔で返事をする。