「結衣、お前そんなに運動部に入りたいのか?」

「別に」



はあ、とため息をつきながら短く答えると利久くんはなんだコイツ……俺がいいこと教えてやろうと思ったのに、とでも言いたげな表情でわたしを見た。

考えていることがわかりやすい利久くん。仕方がないから、わたしは利久くんが教えてくれることを聞いてあげることにした。



「わたし、中学の時美術部だったから運動部入って青春の汗を流したいなあって思ってただけだよ」

「ようし! そんなお前に解決口をやろう!」



野球部にもサッカー部にも入れない憐れなお前に! と余計な一言を付け加えてから利久くんは眩しい笑顔で言った。



「うむ、聞いてやろうではないか」

「よし、言ってやろうじゃないか」



ハタから見れば何言ってんだこいつら、な状況でも利久くんとはなんとなく面白くて笑ってしまうのを必死にこらえる。


そして、利久くんはニッと口角を上げ、バッチリ決まったドヤ顔で言った。



「結衣、お前は、陸上部に入部しろ!」

「陸上部、可愛い子いたの?」

「なっ、おまっ、そういう事を大きな声で言うんじゃありません!」



わたしの予想が当たったのか、利久くんは誰もいない教室だというのに周りをキョロキョロし始める。


利久くんのことだから、そういう事だと思った。わたしが仲良くなったら俺も仲良くなれる~、とか考えているんだろうなあ。わかりやすい。