「入部届だよ。わたし、サッカー部と野球部にしようと思って」
「まだ悩んでたんかい! 入部届、明後日締め切りだぞ! ていうかサッカー部と野球部ってどんだけ頑張るつもりなんだ、どっちかにしなさい、どっちかに!」
「もー、利久くん早口すぎて何言ってるかわかんないよー」
高校に入学して三週間。
利久くんに毎日ツッコまれながら日々を過ごしているせいか、そのツッコミに対してツッコめるというスキルを獲得しつつある。
そんなわたしを利久くんは呆れたような表情を浮かべて見つめる。そして、深い、深い、深すぎるため息。
わたしの顔を見てからため息を吐くだなんて。利久くんったら失礼極まりない。
「結衣……さらに言わせてもらうとうちは女子はサッカー部も野球部も入部できないんだよ……」
「え! そうなの!? 何ソレ全然ダメだよ、男女差別だよ!!」
「だよな! 俺も思うわ! 俺が女子水泳部のマネージャーになりたいって見学行ったらすごい目で見られるし、これも差別だよな!」
「いや、それは気持ち悪いよ利久くん」
「正直だなお前は!!」
わたしの意見に賛成してくれたと思ったらなんだ、そんなことか。
利久くんの小学生のような思考回路について行けず、思わずわたしも深い、深い、とても深いため息をついてしまった。
それにしても、サッカー部と野球部に女子が入れないなんて。そんなことあっていのだろうか。
それならそれで女子サッカー部とか、女子ソフトボール部とか、作ってほしかったなあ。
なんて思いながら明後日の方向を見ていると、利久くんは迷子になった子供をあやすような、やわらかい口調で言った。