ちょうどわたしのほうに向かって財布が投げられてきたのでキャッチする。

チラッと中身を見ると小銭一つ入っていない本当にすっからかんな財布だったので、舌打ちをしてからなっちゃんに押し返した。



「陸上部にしようかなあ、なんて迷ってるんですよねえ……」

「え、マジで! 陸上部!? おいでよおいで、俺、大歓迎!」

「え……?」

「俺、陸上部!」

「おお! そうだったんですね!」

「知らなかったんだ、ショック!」



夕希先輩、中学でも陸上部だったけど、高校でも続けるなんて……すごいなあ。さすがなっちゃんのお兄ちゃんだ。

それに、もし入るとしても知ってる先輩がいたら心強いし。それが夕希くんだったらなおさら。


いいなあ、なんだか陸上部、すっごく入りたくなってきた。



「一年生の部員って、どんな子がいますか?」


部の雰囲気を知るのに越したことはないので、わたしはショックを受けている悠紀先輩にたずねる。



「そうだなあ……選手の部員としては、女の子は一人だけ」

「え! 一人!?」


一年生一人でやってるなんて……その子、すごいなあ。


「男子はほかにもいるけどね」

「あ、なるほど」