小学校に行く途中、
『なんで胸元押さえてるんだ?』
「え…なんでもないよ」
『いいから見せろってっ!!』
「やだっっ!!」
アタシはまた泣いた。
徹は羽織ってたジャージをアタシにかけた。

小学校に着くなりアタシは全てを話した。
「わぁぁんっ」
アタシはただ徹の胸の中で泣くしかなかった。
怖くて、痛くて…。
なんでアタシなのかって。
アタシは笑顔を見せる事はなくなった。
見せるとしたら作り笑い。
アタシは暗闇に落ちてしまった…。
それから深夜にお父さんとお母さんと一緒に警察に行った。
現場検証と事情を聞くために。
家に帰ってくるなりアタシは布団に包まった。


“なんでアタシなの?”
“頭が痛い、体が痛いよ…”

……死にたいな。

アタシに生きてる価値なんかない。
汚れて…傷だらけ。
癒えない傷をおってまで生きていたくない。
アタシの心は暗闇の中。
死にたい、死にたいよ。

それしか思い浮かばなかった。
もう疲れた……。
アタシに生きる意味なんてあるのかな??
次の日。
アタシは警察署に行って来なくちゃいけない。
外は暑いのにアタシは寒かった。
車庫に行くと姉と姉の彼氏が居た。
しばらくするとお父さんから
『シオリ行くよ』
と言われ車に乗った。

警察署に来るなりお父さんは帰された。
不安だけが募る。
警察から言われたのは、
警察の人と一緒に産婦人科に行こうって事になった。

産婦人科に行って、中が傷ついてないかとか調べられた。

頭は大きな打撲。
肩も圧迫されて。
中は傷ついていた。
赤ちゃん産めるのかな?

それからずっと…ずっと警察からの怖い事情聴取。

やっぱり…疲れる。


警察から帰されたのは夕方5時過ぎ。
何回泣いただろうか、すごく目が痛い。

しばらくしてお父さんが
警察署に迎えに来た。

その後まっすぐ家に帰った。
【今日大丈夫だったか?】
徹からのメール。
全然大丈夫じゃないよ。
…大丈夫な訳ないよ。
だって中が傷ついていて、赤ちゃんが出来るかも分からないのに…。
アタシは徹に[大丈夫だよ]と送信した。

嫌われたくない、そう思ったんだ。
あの頃の私は。
しばらくして徹からの返事がきた。
今日会えないかというメール。


正直戸惑った。
暗い道は怖いし、お父さんが外に出してくれるかも分からない。

待ち合わせは神社。

「お父さん、散歩行ってくるね?」
『今日はやめとけ』
そりゃ心配するよね。
「大丈夫。すぐそこだから。8時過ぎには帰るよ。」
そう約束してアタシは神社に向かった。

唯一徹だけが男子の中で心が許せた。
好きな相手だったってのもあるのかもしれない。

しばらくしてアタシは神社の前まで来た。
でも目の前が暗くて、あの日の光景が甦る。

「ははっ。やっぱダメだ…」
アタシは怖くなって後ずさりしていた。

ちょうどその時に徹の声が後ろから聞こえた。

『しおりっ!!』
ビクッとアタシの体が跳ねる。
「あ…」
徹はアタシを強く抱きしめた。
そのとたんアタシの目からは涙が流れた。
それから神社に着いた。

正直この事はあまり記憶がない。
『しおり、もうレイプにあった事は受け止めなきゃいけない。辛いのは分かる。』
アタシの両手は徹から握られていた。

聞きたくない話し。
どう受け止めればいいの?
アタシはこんなに苦しい思いをしたんだよ?
なのに受け止めなきゃいけないの?

「…やだっ…」
アタシは必死に両手をほどこうとした。
『今現実で逃げてどうするんだよ!!』
「やだぁっっ!!」
アタシは両手で耳を塞いだ。

『しおりっ!!』
徹はアタシを抱きしめた。
「やだぁ……」
アタシは耳を塞ぎながら泣いた。
『…しおり。しおりが味わったレイプで、どれだけ傷ついたかは分からない。俺はしおりじゃないから。…しおりは受け止めなきゃ。今の俺にはしおりを受け止めていけない…。』
徹はゆっくりと話した。

「………」
アタシはただ聞くだけ。
徹の顔を見ないで…。
見れなかったんだ。

『いつか…受け止めなきゃいけない事なんだ』
「やだ…」
それでもアタシは受け入れたくなかった。

『しおりとは今日でさよならだ。』
え………。
今なんて…?

『もう俺はしおりにとって必要じゃないから』
必要だよ?
何を言ってるの…?

『さよなら。しおり』
そう言ってキスを軽くして去って行くあなた。

「やだ…やだぁっ。」
アタシはその場で泣くしかなかった。
あなたの名前を呼びながら。

あなたを追う事ができなかったんだ。
本当は嫌だって言いながらしがみついているのに。
それができなかった。

その場から動く事ができない。
アタシはケータイを取り出して徹にメールをした。
______________徹アタシね、きっと乗り越えてみせるよ。乗り越えていつか徹に笑顔を見せるから…それまで待っててくれるかな?徹がメアドを変えてもアタシに送ってね?約束だよ。ティラミスもおごってね
______________
こんな感じのメールをした。
泣きながら家に帰った。
布団に包まって、ケータイを側において目をつむっていた。
目をつむると徹の顔が浮かんだ。

笑った顔。
真剣な顔。
怒った顔。
悲しそうな顔。
みんなみんな好きなんだ。
なのに…徹はさよならをアタシに告げた。

もう何もできないよ…。