「あ、ごめん恥ずかしいよね!僕は帰るね、また今度!」
え…⁉
日向さんは、そう言い残して走って雨の中かけていった。傘は私の手の中にある。
じゃあ、日向さんはずぶぬれ状態…!
急いで走って追いかけたが、雨で視界も悪く、彼の姿は見つからない。
雨の中に、消えるように去っていった。傘を残して。
日向さんは去り際に、『また今度』と言っていた。そうだ、傘を返さなくては。
でも家もわからないし、学校もわからない。
わかるのは『日向 蒼』という名前だけ。
「もう、いったい何なのあの人…」
そう呟きながらも、私は彼の体温がまだ残っているその傘を差して家に帰った。