最後の最後まで騒いでいた恭也は、ギリギリになってあたしにこんなことを言ってきた。
「おいカノカ。お前、さっさと倒していちばん先に出てこいよ。そんでもって、早く棟に戻ってアップルパイでも作って待ってろ」
素直にアップルパイ作ってって言えばいいのに、まったくいつまで経っても上から目線な俺様恭也に、あたしは呆れながらも頷いておいた。
ちなみに律くんからは始終心配そうな目を向けられ、
「……怪我には気をつけろ。柚にはたらふく食べさせておいたから、たぶんしばらくは機嫌が良いと思う」
と謎の報告を受けた。
けれどそのあと、アップルパイ楽しみにしてる、とあたしの頭をポンと撫でて。
とくに取り乱すことなく戦場へ向かっていった律くんは、いつも通り不意にドキッとさせてくるから、やっぱり危険人物だ。
一方のユキちゃんからとやかく言われることはなかったものの「日向は任せろ」と安心のひと言を頂いたので、あたしは笑顔で日向とわかれることが出来た。