───あの日、櫻井さんに挑んだジャンケンで勝ったあたしは、その報酬として〝理事長の仕事を手伝わせて〟と提示した。


あくまでそれは〝手伝い〟の体ではあるものの、これまで彼が担っていた代理としての理事長の仕事を今はあたしが引き受けている。


櫻井さんは『本当に心優しい方ですね』と困った顔で笑っていたけれど、この仕事をはじめてから以前よりも毎日が充実しているように思う。


もちろん、ガーディアンの仕事も手を抜かない。


以前の通り交代で学園を見回ったり、生徒会としての活動を行いながら、手が空いたときに少しずつ理事長としての仕事を片付けるという生活。


有栖川学園という国家機密に包まれた学園では、そんな日々でも毎日なにかしら驚くことがあって、あたしを含めたガーディアンのみんなは日々奮闘しているんだ。



「あたしはおじいちゃんに会ったことがないからなんとも言えないけど、きっととっても優しい人だったんだね」


「ええ……優しくもあり厳しくもある素晴らしい方でしたよ」



櫻井さんの言葉に同調するように日向が笑った。


日向はあまり自分の話をしない。


あたしと本当の兄弟だと知ってからも、日向はなにも変わることなく以前と同じように甘えてきては時々びっくりするようなことをする。