◇
姫咲様、という声に顔をあげると、櫻井さんが理事長室の扉から顔をのぞかせていた。
スラッと伸びた長い足の下には、つぶらな瞳をうるうるさせてこちらをじっと見つめる日向の姿。
ふふ、可愛いなぁ。
立ちあがって目線を合わせるようにしゃがみこんでから、日向に向かって「日向」と手を伸ばす。
その瞬間、ぱっと顔を輝かせた日向は一目散に駆けてくると、思いっきりあたしに向かって飛び込んできた。
体当たりといっても過言じゃないくらいの勢いの日向を受け止めて、あたしはそのままクルッと回りながら抱き上げる。
「ぎゅー……!」
「ぎゅーっ!」
頬をくっつけて思いっきり抱きしめあってから、あたしと日向は顔を見合わせて笑う。
そんなあたしたちを微笑ましそうに見ていた櫻井さんが、クスッと笑いながらデスクまでやってくる。
「進捗はいかがですか、花乃香さま」
「まあもう2週間だし、あらかた片付いたかな。明後日はガーディアン祭の決勝だし、今日のうちに終わらせちゃうつもり」
「さすが、仕事がはやいですね。そのガーディアン祭ですが、ついさっき決勝戦に勝ち進む三組が決まったようですよ」
そう言って櫻井さんが手渡してくれたのは、一昨日から開催されているガーディアン祭の現時点での結果票。