「……カノカ」
日向の声でハッと我に返る。
抱っこをせがむようにこちらに向かって両手を広げる姿は、もう何度見たかわからない。
もう何度、日向を抱きしめたかわからない。
日向は出逢った瞬間から、特別だった。
みんなとは違う……もっと愛しさに近いものを抱いていた。
日向をそっと抱き上げながら、あたしは櫻井さんを見上げる。
……だめだ、動揺が隠しきれない。
「日向は、それを知ってたの……?」
「いえ、知らなかったはずですよ。日向様自身は、うすうす気づいていたみたいですが」
そうなの? と尋ねると、日向は肯定も否定もせず、あたしにぎゅっと抱きついてきた。
それでもどこかスッキリしたような顔で、珍しく嬉しそうに口元に笑みを浮かべている。