家にも。病院にも。施設にも。


親戚に聞いても、病院の先生に聞いても、役所に聞いても生まれたばかりの弟の行方はわからなかった。


しかも、一部では失踪だとか誘拐だとか噂も立つ始末。


さらに父のこともあって、病気で命を落とした母がなぜかショックのあまり自殺をしたという根拠のない報道がされたこともあった。


そんな絶望のなか、どんなに調べても弟の情報は痕跡すら掴めなくて、結局あたしに残ったのは〝孤独〟だけ。


家族すら失ったあたしには、もう帰る場所もなかった。


アメリカに戻り、それまで通り大人のもとで働いた。


なんの目的もなく、なんの夢も、希望もなく。


そんななか、日本からやってきていた留学生に有栖川学園の噂を聞いたのだ。


日本を離れている時間の方が多かったあたしは、そのとき初めて有栖川学園のことを知った。


それを見計らったかのように、有栖川学園から入学の招待状が届いて……あたしは今、ここにいる。