呼吸をうまく出来ていないのを心配したのか、ユキちゃんが「大丈夫か」と背中をさすってくれるけれど、

それすら感じられないくらい……あたしは日向から目が離せなかった。


もうお分かりですね? とでも言いたげに、櫻井さんは日向の手を引いてゆっくりと近づいてくると、あたしの前で立ち止まった。


日向がもじもじしながら、こちらを見上げる。



「日向様のじつのお母様の名前は〝有栖川香織〟様──いえ、〝姫咲香織〟様です」


「か、おり……」



姫咲香織。


……それは、あたしの母親の名前だ。



「それ……姫ちゃんと同じ名字じゃないか?」


「あっ、そうだ! カノちゃんの名字、姫咲じゃん!」



ユキちゃんと柚くんが声をあげる。


それで恭也と律くんもわかったようだった。


まさか、と集中する視線に答えたいけれど、そもそもあたし自身がまだ信じられていなかった。


だってそれが、本当なら。


日向の母親が……あたしの母親なら。