「理事長は生前から自分の血縁の者にあとを継がせると仰っていたのですが……元々心臓に持病をお持ちで、亡くなったのも突然の事だったのです。なので、本来の予定ならもっと日向様が大きくなってから進行する話だったものが、ずいぶんと前倒しになってしまって……」
「……だから問題なんだな」
律くんが納得したように目を伏せる。
「理事長にはひとりだけ娘様がいらっしゃいました。その方は結婚して子どもを生み、言葉は悪いですが、ごく普通の生活を送っていたのです。ただ、体が弱かった。跡継ぎという話もなかったわけではありませんが、出来ることならこのまま普通の人生を送らせてやりたいというのが、理事長のご意向だったのです。……ですが」
「……ですが?」
「亡くなられたのです。ご病気が悪化して」
ああ、聞きたくない言葉だ、と思った。
心臓が痛い。
さっきよりもずっと、胸が苦しくなってくる。