「問題は、そこなのです。ここからが本題といってもいいですね。……驚かれることを承知で申し上げますと、いま有栖川学園に〝理事長〟の地位に立たれる方はいません」



あやうく「オーマイガー……」と飛び出しそうになるのをグッと堪えて、あたしは狼狽しながら手を上げる。



「はい、ちょっと櫻井さん。いま、なんて言った? 理事長がいないって言った? それ、まずくない?」


「ええ、マズいです。マズいどころの話じゃありません。さらにマズイことを付け足しますと、正式な後継者として指名されていた血縁の日向様が……まだ幼すぎる、ということです」


「日向が後継者……!?」



さっきから驚いてばかりだ。


さすがにあたしたちも頭がついていかなくなりそうになる。


たしかに日向は理事長の孫だと聞かされていたし、血縁関係でいえば後継者になる可能性もないとは言えないかもしれない。


でも普通ならまず、日向の親にあたる人が引き継ぐんじゃないの?