「さて、回りくどく言うのは好きではないので端的に言いますと、本来の私の役職は執事ではなく──〝秘書〟なのです」



……秘書?



「それは、理事長のってこと?」


「さすが姫咲様。ご名答です」



理事長秘書。

だから、この部屋なのだろうか。


でもそれならなおのこと、なんでそんな立場の人間があたしたちガーディアンの執事をしていたのかわからない。


秘書なら常に理事長のそばについていなければならないはずなのに、櫻井さんはいつどんな時に寮に帰っても、当たり前のように執事の仕事をこなしていた。



「私は十年前からここで秘書として働かせて頂いています。ちなみにその前はここのマスターコースに所属する生徒でした」


「へ〜、じゃあやっぱり卒業生なんだ?」


「いえ、私は卒業はしていませんよ」



なんてことのないようにさらっと言い放った櫻井さんに、あたしと柚くんの「ええ!?」という声が重なる。



「三年生まであがりましたが、残念ながら途中退学です」



恭也が「はあ?」と片眉をあげ、律くんは無言で首を傾げ、ユキちゃんは考え込むように腕をくんだ。


たしかにここでは日常的に退学となる生徒がいる。


それは=生き残れなかった、ということで。