こんなに広いのに、家具はそのデスクだけだ。


まるでずっと使われていなかったかのような空疎な雰囲気に、あたしたちはよけいに警戒を覚えてしまう。


理事長……もいないみたいだし。


あたしたちを呼び出したなっちゃんもいない。


デスクの前で立ち止まり、ゆっくりとこちらを振り向いた櫻井さんはぴくりとも表情を崩さずに、じっとこちらを見据えてきた。



「まず最初に申し上げておきますと、あなた方を呼び出したのは私です」


「櫻井さんが……?」


「はい。姫咲様の戦闘が終わったと報告を受けましたので、タイミングを見て招集してもらいました。理事長室を指定したのは、これから話す内容になにかと説明がつくためです」



報告を受けた。

招集してもらった。


理事長室を指名した───。



「まるで上司みたいな言い回しだな。櫻井さん」



あたしが思っていたことを代弁してくれたユキちゃんに、櫻井さんはまったく動じることなく「そうですね」と小さく顎を引いた。