「さて、皆さま。お待ちしておりました」
「……なんであんたがここにいるんだよ」
あからさまに威嚇しながら恭也が問う。
櫻井さんはそれには答えずに扉を開け放った。
あたしたちを中へ招くように「どうぞ」とひとことだけ落とし、毅然とした態度で中へと歩いていく。
4人は顔を見合わせ、それから揃ってこちらを振り返った。
あたしが頷いてみせると、まずは恭也とユキちゃんが前へ進み、そしてあたしを挟むように柚くんと律くんが隣についた。
「カノカ……おっりする」
「あ、降りる? ちょっとまってね」
日向をゆっくり地面へ降ろし今度はしっかりと手を繋いでから、慎重に恭也とユキちゃんの後を追う。
いくら理事長室とはいえ、入学式の時のように突然水が降ってきたりしないとも限らない。
……それにしても、
「理事長室……なの?」
五十畳はあるだろう広々とした室内。
高級感溢れる赤の絨毯とカーテン。
オーナメント柄のオフホワイトの壁紙。
正面頭上には天使と太陽が描かれている印象的なステンドグラス。
そしてその下には、独特な波面のような柄が彫られたエグゼクティブデスク。