とはいっても、どうやら葛鬼は本当に頭がいかれてしまったらしい。


こちらの声も聞こえないくらいのパニック状態。


なのになぜか、なおもあたしを追いかけてくる。


もうそれしか考えられないのか、ただ単に虫を取ってほしいのか……こうなってくるとバトルの意味もなくなってくるというものだ。


仕方なくあたしは走りながら地面に転がっている石を数個拾い上げる。


身を屈めて走るスピードをアップし、腰ほどの高さの岩を踏み台にしてあたしは思いっきり空へ飛んだ。



「せーのっ──と!」



ふわっと地面から5メートルほどの高さまで跳ね上がったあたしは、上昇過程で体をひねりスケートのジャンプの要領で葛鬼の方を振り向く。


そのまま両手の指に6つ挟んだ小石を、それぞれ角度をつけて葛鬼に向かって勢いよく解き放つ。


一直線に飛んでいった石たちは、狙い通り葛鬼の体に付く虫たちをピンポイントで打ち落とした。


我ながらお見事!と言いたいところだけれど、石の衝撃でダメージを受けた葛鬼がそのまま後ろにひっくり返ったので、あたしは慌てて着地し駆け寄る。


葛鬼は、あっけなく……目を回していた。