「な、」


「む、虫ぃぃぃぃぃィィィ!!」


「なになになになに、ちょっ、やっ、こないでっ!!!」



ほぼ反射的に、あたしは背を向けて反対方向へ走り出す。


さっきとは比べ物にならないくらい全力も全力で。



「なんなのあんた!? こっちこないで! 森におかえり!!」


「イィィィイヤァァァア!」



もはや違う意味で血走った目をしてこちらへ向かってくる葛鬼は、体のあっちこっちに白い体をうねらせた気持ち悪度MAXの白い虫をつけていた。


いったいあたしの放った石礫は何をしでかしたんだろう……。


もしかしてその変な……虫の巣でも、落としちゃったのかな?


ていうか、



「あたしもムリだから! そんな虫付けてるヤツと接近戦なんか出来るわけないじゃない! バカ!!!」



とりあえず、この様子からするに葛鬼は虫が大の苦手らしい。


でもさ、だからってそんなに狂わなくてもいいじゃない!


なんでこっちくるのよ!?


絶対ソレ、あたしに付けようとしてるよね!?


ねえ!?