「……っ、カノカ」


『べつに平気だよ。聞かれて困る話でもないし、きっといずれはみんなにも知られちゃう時が来ると思ってたから』



でもね、と少しばかり瞳に影を落としてから、カノカはふたたび葛鬼に向き直る。



『あたしはこの過去をずっと引きずってきて……今もなお、心のいちばん大きいところを黒く塗りつぶして支配してるんだ。事実を受け入れてないわけじゃない。真実を話すことは出来る。でもその先に……あたしはずっと光を見い出せないまま生きてきたの』


「……カノカ、なかないで……」



今にも自分が泣きそうな顔でモニターに縋り付く日向に、カノカは首だけこちらへ向けて『日向?』と笑ってみせた。


泣いてはいない。


けれどどう見ても無理に作った笑顔でしかないそれに、日向はなおのこと苦しそうな顔でギュッと唇を引き結ぶ。



『大丈夫だよ、あたしはもう泣かないから』



またそんなこと言うのか、お前は。


またそうやってひとりで行こうとすんのか。


日向だって、俺たちだって、こんなにも近くにいるのに。