しかしそれは俺たちとて同じこと。


心も体も崩れかけたカノカの姿を目の当たりにしたあとでこんな姿を見せられると、どこか釈然としないところがある。



『いつだって明るくて前向きで……それこそポジティブシンキングな人だったんだから。でも母は元から体が弱くて、不治の病を抱えてた。そんな病を抱えながら──ちょうどその事件があったとき、母親のお腹の中には赤ちゃんがいてね』



赤ちゃん?


「……妊娠してたってことか?」


『そういうこと』



無意識に呟いた俺に答えたのはその場の人間じゃなかった。


驚いてモニターを見ると、カノカがこちらを見あげて困ったように薄く笑みを浮かべていた。


なんで声が、と焦って日向の手元を確認すると、いつの間にか音声がオンになっている。


さきほど日向が改造して〝中と外を繋ぐ〟ようになったこれ。


まさかカノカがそれを予測していたわけではないだろうが、カノカの冷静さを見るかぎり、初めから俺たちが聞いていることをわかっているようだった。