モニターの中のカノカは、カメラの位置的に顔が見えない。


風ではためく白い制服に走る赤いラインがやけに目につく。


自分も同じ制服を着ているはずなのに、どうしてかカノカだけがたったひとり──孤独であるように見えてしまう。



『あたしは7年前……10歳の時に両親から離れてアメリカに移ったの。その前から、国内のあっちこっち飛び回ってたから実際親元を離れたのは7歳だけどね。まあ、それからは去年までずっと向こうの研究機関のなかで生活してた』


『知ってますよぉ〜? 帰る場所もありませんもんねぇ、アナタには』



嘲笑うかのように口端をあげて気色悪く笑う葛鬼の顔をぶん殴りたくなる衝動を抑えながら、俺はギュッと拳を握りしめた。



『……そうね。帰る場所がなくなっちゃったから、そこにいるしかなかったって言う方が正しいかもね』



けれどカノカは、動じる様子もなく、淡々とそう返した。


顔は見えないものの、薄く微笑んだ顔がふっと頭に浮かぶ。



『あたしの両親はごく普通の人たちだった。父親はパイロットで、母親はキャビンアテンダント。同じ職場で出会って結婚した、そんななんの変哲もない普通の夫婦。でもあたしが生まれたせいで……その〝普通〟は〝普通〟じゃなくなってしまった』



普通の子どもじゃなかったから。


そう告げたカノカの声は、ほんの少し震えていて。