恭也side




『──いいよ、教えてあげる。あたしの本当の過去を』



日向がフィールド内部のカメラとマイクを繋げた瞬間、カノカのそんな声が聞こえてきて、思わず俺はモニターを凝視した。


傍らで哲平とかいうヤツを締め上げていた柚と律も、ピタッと動きを止めてこちらを振り向く。


……カノカの、過去。


知りたくないわけじゃない。


あいつがこれまでどんな人生を送って、どんな日々を過ごしてきたのか──それはここにいる全員が触れたくても触れられなかったことだ。


基本的にいつだって笑顔を絶やさずバカみたいに元気なカノカが、ふとした瞬間に見せる表情のかげり。


悲しそうな、辛そうな、なにかを諦めたような。


らしくない──なんて言うべきではないのだろうが、あまりに似合わないそういう顔は、ここ数カ月で何度も見てきたわけで。


ただ〝互いの過去に触れない〟というのは、いつからか……いや最初から、俺たちの中では暗黙のルールとなっていた。