葛鬼の至近距離まで間を詰めたあたしは、とりあえず一発勢いに任せてブンッと回し蹴りを放つ。


それを真上に飛んで軽く避けた葛鬼は、そのまま近くの岩石に着地した。


高さ140センチくらいの岩の上で、余裕の笑みを浮かべる悪魔。


こちらをニヤッと見下ろしながら、葛鬼はわざとらしく肩を竦めてみせた。



「余裕……なんて、ありまくりですよねぇ?」


「へぇ?」


「だってあなた、すーぐ壊れちゃうじゃないですかぁ」



過去のは・な・し、と舐めるように言った葛鬼に全身の毛がそば立つ。


ほんっと、びっくりするくらい気持ち悪いなこの男……。


さんざんナメてくれちゃって、まったくガーディアンリーダー……いや、有栖川学園首席の名も全然役に立ちやしない。


それもこれも、あたしが〝ぽくない〟からなんだろうけれど。