「そもそもなんで日向と戦おうとしてたわけ!?」
「そんなのあなたの弱点だからに決まってるでしょう?それに彼は、頭脳だけなら飛び抜けていても戦闘能力自体は芳しくないですからねぇ、狙いどころ──ってやつですよぉ。おっとっと」
瞬間的に足元に落ちていた石を葛鬼に向かって飛ばしたあたしは、避けた隙をついて思いっきり地面を蹴る。
こういうタイプは遠距離で攻撃していても埒(らち)が明かない。
まだお互いに様子見程度にしか仕掛けてはいないけれど、時間をかければかけるほどあたしが不利になるのは目に見えている。
だったら、一か八か攻めてみるしかない!
「日向をバカにしてる余裕……あるの?」
葛鬼の最大の攻撃手段は情報───。
監視者である哲平にはあたしたちの会話を全て聞かれてしまっているし、今さら怖がっても仕方がないのだ。
事実は事実。過去は過去。
たったそれだけ。
それだけでも、あたしは、まだ乗り越えられていない。
でも、乗り越えなくちゃいけないのはわかってる。
今ここで。
───みんなのために。