でも、前にカノカが言っていた。
〝友〟と書いて〝ライバル〟と読むこともあるんだよ──と。
ライバルは敵同士で仲良くするものじゃない、というのが知識上で根付いていたボクにとって、それはなかなか飲み込めるものじゃなかった。
友だち……なら、仲良くするべきかもしれないけれど。
「カノカ……ボクの……だもん」
「あ、ひなっちのケチんぼ癖だ。ねえ律、聞いた?いいの?カノちゃんのこと取られちゃうよ?」
律の肩をバシバシ殴る柚を見ながら、ボクは唇を尖らせて恭也の髪の毛を握り直す。
「いっ……てぇよ! もう少し遠慮持って掴めチビスケ!」
「……はやく、いくの!」
カノカのところに!
「ったく、あいつに似て可愛くねー……」
愚痴るようにボソッと落とした恭也の頭を、とりあえず柚の真似をして殴っておく。
「いでっ!」と声をあげて、またもや怒号を張り上げる恭也をカノカがいつもするようにあしらいながらボクは大好きな人がいるだろう方向を見つめた。