「りっちゃ……」
──律は、いちばん自分に似ている。
ボクと違って言葉の発音が難しいというわけではないけれど、律は喋るのがあまり得意ではないんだろう。
表情の変化も少ないし、なにを考えているのかわからない。
でも今ここにいるメンバーのなかではいちばん優しいってことを、ボクは知っている。
カノカはもちろん、メンバーのことを大切にしている律は最初から悪い印象ではなかった。
それに対し律が面倒をみている柚は……正直、苦手かもしれない。
「ゆ、ゆっちゃ……」
嫌いというわけではないけれど、柚はとにかくはかれない。
はじめて会ったとき、ボクには彼が見せている笑顔が作り物に見えて仕方なかった。
最近はだいぶそう感じなくなってきたものの、どうしても柚と二人きりになるのは避けたいと思ってしまう。