でもこんなふうに言ってくれるみんなも……今は……。


最初はカノカ以外の人が怖かった。


やっとユキちゃんの名前だけは呼べるようになったものの、他のみんなはまだ一度も口に出して名前を呼んだことはない。



「……き、」



いつも怖い顔をして、カノカをいじめる嫌なヤツ。

それが最初の印象だったけれど、関わっていくうちにじつはそんなに嫌なヤツじゃなかったのが──恭也。



「きょ……きょちゃ」


「ん?きょちゃ?」



なんのことだ?と柚と雪斗が顔を見合わせる一方、もしかして、と律が声をあげる。



「恭也のことか?」



ボクは頷いて、もう一度「きょちゃ」と噛み締めるように呟いてみる。


……呼べた。

……呼べたよ、カノカ。


それから律へ視線を定めて、ボクはこくりと唾を飲み込んだ。