それに今は、櫻井さんの方が重要だ。


この人はただ者じゃない。


私たちを監視しているといったその言葉の意味を教えてもらわない限り、もう彼の前で警戒心を解いて過ごすことは出来ない。


日向は、私が守らなくちゃいけないから。



「そんな怖い顔をしないでください」


「じゃあ教えて。なんで私たちを監視してるのか」


「──時がくればわかりますとも。今はそのときじゃない」



どういうこと?


だって櫻井さんは恐らく、私がこれからなにをしようとしているかを察して私の目の前に立ち塞がっているわけで。


今を逃したら、この先がないことくらい……わかっているはずだ。



「あなたはなにもわかっていませんね」



どこまでも深く潜っていけそうな瞳に捉えられ、私は思わず日向をぎゅっと強く抱きしめる。


日向は戸惑いながらも私にしがみついて、耳元で「カノカ、だいじょぶ」と小さな声で励ましてくれた。