複雑な心境に陥りながらも、日向を安心させるように頭を撫でる。


ユキちゃんはその様子を見届けてから、踵を返して部屋を出ていった。


あたしもよろよろと立ち上がり、恭弥の手を借りながらベットへと戻る。


どうせ吐けないのなら、トイレにいても仕方ない。



「待ってろ、洗面器持ってきてやる」


「ありがと……」



そういえば、前もこんなことあったな。


あたしが熱を出した時──マスター棟の部屋で動けなくなっていたところを見つけてくれたのは恭弥だった。


あの時もぶつくさ文句を言いつつ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたんだよね。


案外、ユキちゃんに影響されてたりして。


ふふ、と笑うと、あたしの横たわるベットに腰かけていた日向が不思議そうに首を傾げる。


なんでもないよ、と答えて、そっとまぶたを閉じた。


今の体の状態じゃなにも出来ない。


せめて自由に動かせるくらい回復しないと。


それからしばらくして、ユキちゃんと一緒に柚くんや律くんもやってきた。


眠りこそしなかったものの、恭弥同様ふたりの様子がおかしかったので、とりあえずまぶたを開けて笑いかけてみた。