「恭也、そのまま姫ちゃんをベットに運んでやってくれ」
「あぁ」
心の中では人一倍、みんなのことを大切に思っているのに、それを上手く表に出せない。
出そうとすると、空回りしてしまう。
そういうタイプなのだ、恭也は。
「……恭也」
「あ?」
「ありがとね」
ふと笑ってそう言うと、恭也はかっと耳を赤くしてそっぽをむいてしまった。
「別に、礼言われるようなことはしてねぇ」
ぼそっと返ってきた言葉に、あたしは苦笑する。
まったく素直じゃないんだから。
……でも、ほら、やっぱり恭也が近くにいるとなんか安心するんだよ。
体から力が抜けて、あたしは眠気に誘われるがままそっと瞼を伏せた。
「……デコ、悪かったな」
意識が遠のいていく中で、そんな恭也の小さな声が聞こえたような気がした。