「……大丈夫かよ」
大丈夫じゃないわよ、あんたのせいで。
恭也はどうしたらいいのか分からない、と言ったようにあたしの目の前にしゃがみこみ、険しい顔で覗き込んでくる。
「つかお前、勝手にいなくなんなよ。焦ったじゃねぇか」
「……シャワー、浴びたくて……」
「髪濡れたままだし。まだ熱下がってねぇだろ。馬鹿じゃねーのマジで」
馬鹿って何よ、馬鹿って。
そうは思ったものの、珍しく恭也が心配そうな顔をするもんだから、なんだか泣きたくなってきて、奥歯を噛み締める。
「上、戻んぞ」
「……うん、でも」
「歩けねぇんだろ。ったく……ほら、ちゃんと掴まっとけ」
恭也はあたしの背中と膝裏に手を回すと、軽々と横抱きして立ち上がった。
そう言えば昨日は、律くんに俵担ぎにされたな、とぼんやりと思い出す。
むしろ恭也が俵担ぎで、律くんがお姫様抱っこってキャラなのに。