「ちょっと、律くん!?」
「……俺が運ぶ」
「運ぶって、あたしを?」
「ん」
ん、じゃないよ、律くん……。
人を俵担ぎで運ばないで頂きたい。切実に。
とはいえ抵抗しようにも体に力が入らないため、結局されるがまま、律くんがエレベーターに乗り込む頃にはもう諦めていた。
最上階、マスタールームに着く。
ちりんっ、と鈴の音が鳴り響いた。
扉が開いた直後、みんながぎょっとしたように腰を浮かせる気配を感じる。
「どうした、姫ちゃん」
「おい律、なんだソレ」
「か、カノちゃん? どうしたの?」
律くんは何も答えない。
というか、オーラが怖いオーラが。
みんなの横をつかつかと通り抜けると、隣のベッドルームまで一直線に向かいベッドに慎重に下ろしてくれる。
やっとおりれた……。
ぽすっと優しく自分を受け止めてくれた安定感にほっと安堵の息が零れた。
「律くん、ありがとね」
「……いいから、寝ろ」
「いや、あの、でも……」
みんなが頑張ってるのに、と律くんを見上げると、珍しくご立腹なのか有無も言わせない圧を含んだ視線を向けられた。
……うぅ。
ただでさえ表情が出ない律くんにそういう目をむけられると、精神的にくるものがある。
ぐさっとね、こう、ぐさっと。