「律くん?」



いつまでもこの状態はさすがに恥ずかしすぎるので、どうか今すぐやめてくれないだろうか。


あたしはこれでも一応十七で、もう抱っこなんてされる年齢じゃない。



「……熱い」


「うん、」



……律くんの視線がね?



「……花乃香さ、お前、熱あるだろ」


「へ?」



思わぬことを言われて、あたしはきょとんと目を瞬かせる。


熱? ……あたしが?



「……そう?」



あぁ、でもたしかに体は熱いかもしれない。


やたら目眩がするのも、頭がひどく重いのも、体が気怠いのもそのせいか。


不思議なもので、病は気からという言葉通り、自覚するとさらに具合が悪くなってくる。



「……こんくらいどうってことないよ。律くん上に戻ろう。というか、おろして」



それでも心配かけないように無理やり笑顔を作って、あたしはバタバタと足を動かした。


けれど律くんは難しい顔をしたまま、一向に私をおろそうとしない。


あろうことか……



「わっ」



そのままあたしを肩へ担いだ。


とつぜん俵担ぎ状態になった私は、感じたことのない浮遊感にあわてて律くんの制服をつかむ。


いやいや、なんでどうしてこうなった。