なっちゃんにその時の話をすると、その顔は今までにないくらい苦渋に染まっていた。


どこか苛ついているようにも見える。



「結局、隅から隅まで調べたけど侵入された形跡はなかったんだよね。恭也」


「あぁ……そもそも、チビスケの張ったセキリュティは完璧だった。あれに潜るとなったら相当なクラッキング能力がないと無理だろ。日本レベルじゃ話にならねぇ」



恭也と目配せし合って、あたしは日向をぎゅっと抱きしめる。


もちろん葛鬼神楽の言葉が、脅迫のためのはったりだったという可能性もある。


しかし油断ならないのは、相手がマスターズコースの生徒で、ハンチングクラッカーという異名を持つのは事実だということ。


その気になれば、いくらでも掘り出せる───そういう意味とも捉えられなくはないのだ。