「恭也っ!!」
「……ってぇな……ふざけたことしやがって」
恭也は眉間に深く皺を刻み、手を払う。
その足元には、地面に食い込むようにして恐らくブリキのジョウロだろうものが、原型を留めずに転がっていた。
今しがた打ち落としたそれを、恭也は怒り余ってガンッ!と音を立てて踏み潰した。
「まぁでも……俺らにこんな真っ向に挑んでくる度胸は認めてやるけどなっ」
恭也はまるでサッカーボールを扱うように潰れて歪な形になったじょうろを足ではね上げると、それを空中で掴み、
ブンッ!
その場で一回転。
低く風を切る音とともに、遠心力を乗せて思いっきり投げ返す。
それは一直線に空を駆けて飛んでいく。
行く先には、等間隔に植えられているごく普通の並木があるのみ。
けれど、そこでやっと気づいた。
……あの後ろ、誰かいる!