その時、ふたたびエレベーターが到着する音が響いた。


全員の視線が、一斉にそちらへ向く。



「……お?」



なかから出てきたなっちゃんは、ぎょっとしたように後ずさった。



「なにその殺伐とした空気。あんま姫咲を困らせんなよ」



しかしすぐに事情を察したように、あたしへ同情の視線を送ってくる。


なっちゃんは基本的に女子の味方らしい。


……まあ、ここに女はあたしだけだけど。



「別に、困らせてねぇし」


「そーだよ、なっちゃん。心配しなくても僕、カノちゃんのことは大好きだし。恭ちゃんも可愛くなれば好きになるんだけどなぁ」


「そーいう問題なのかよ。てか誰が可愛くなるって? キショいこと言うな」



とはいえ、そこまでいがみあっているわけでもないんだよね。


この二人にとってはこれが会話というか、あぁ、喧嘩するほど仲がいいってやつだ。


あたしはユキちゃんと顔を見合わせて、仕方ないね、と苦笑した。