二十二時を回った頃だった。

ステップの一歩目までは
高さがあるので、
近くの鉄柱を使い猿の様に伝い、
ついに、
電柱のステップに足を掛ける。


そのまま登れば、
呆気ないくらい簡単に
アーケードの上に、

リカの部屋の手前に辿りついた。

あのガラスの向こうに、

リカがいる。


アーケードの上はM字の
波状になっていて、
ボルトも突き出している。
非常に歩きにくいが、

あと数メートルで窓に届く。

灯りはついたままだ。

窓の前で俺は一つ息をつき、
ノックをした。

その数秒後、
部屋の灯りが消える。


あ、あれ?

もう一度ノックしようか、迷ったが、
そりゃ誰か分からないモンな。

と思い、
窓に頬ずりする程近寄って、小声で、

俺だよ、モッツ…、

と言いかけた瞬間、

中でシャッ、とカーテンを引く音と
共にカチっとカギが開いて、
乱雑に窓がスライドし、

カーテンの下から潜り込む様にして、

『もうっ、分かってるよ!』

と怒り調子でリカは、

子リスが巣穴から頭を覗かせるように、
ひょこっと顔を出した。


…か、可愛い。