「あっ!」 誰かが小さく叫んだけど、もう遅い。 上履きを脱ぎ捨てて 椅子に飛び乗って机の上へ。 そしてひとつ向こうの机へジャンプ。 「逃げた!」 誰かが言う。 教室の机の上を走って移動しながら出口にたどり着く。 ちょうどその時。 「伊紅!」 後ろに集団を引き連れた伊澄が来た。 「伊紅、あの人ならさ」 「あ、今きっと考えてること、同じ」 二人で走る。 さすが運動部だけあって、みんな速い。 目指すのは、社会資料室。