「また一段と可愛くなってたのよぉ」

「そんな変わってないだろ」

「始は毎日会ってるから分からないかもしれないけど、すらっとして、大人っぽくなってたわぁ。あれはモテるわよ、絶対」


二言目には上村の彼氏について探ってくる。


俺がたぶんいないと答えると
あら、そうなのーと上機嫌な高い声で返される。

今話題の俳優がテレビに映れば、母の意識は完全にテレビに向いた。



今日この1日でどれだけ上村のこと聞かなきゃいけないんだろう。

こんなに他のクラスメイトと違ければ、嫌でも意識してしまうのは当然なのかもしれない。


でも俺は、それ以上に上村のことで頭いっぱいになることがある。


「春田か……」

「何?」

「なんでもねーよ」

「そう?ご飯できたわよ」


つるっと平らげ、自分の部屋へ行った。



栗山といい、母親といい俺の周りは一方的に話す奴ばっかりなのか。


春田といえば、明るくて、クラスの人気者。

一方の俺は日陰的存在。


体育のバスケでパスがよくまわるあいつとボールの行く先を追いかけてる俺とじゃ天と地の差だ。


上村だってクラスで目立たないけど、何回か告白されたことがあるのを母親からじゃなく、風の噂で知っている。


認めたくないが俺からすれば、高嶺の花だ。


小学校の頃、いつも鬼ごっこで誰よりもはやく捕まってたくせに。