グルグル考えすぎてたせいで、里穂さんの呼びかけに反応が遅れてしまった。
「美琴のことで、いろいろごめんなさい。美琴もこんなに心配してくれる人がいるんだから、早く目を覚ましたらいいのにね」
「俺は別に……」
こんなの、罪滅しにすぎないし。
母さんの言う通り、告白してフラれて沢田と関わるのを辞めるのが一番に決まってる。
だが、俺にはそんなことをやる勇気はないんだ。
弱虫なんだよ俺は。
「とにかく、交代ごうたいに美琴に声をかけていこう。これは長期戦になるだろう。あたしたちも無理せず、やってくんだ」
母さんの指示で動くのは、思春期の男子としては気が引けるが、沢田に目を覚ましてもらうためにも、これだけは避けられない。
「みなさん、ご迷惑おかけします」
ここで深々と礼をしてくる里穂さん。
迷惑とか思ってねぇんだけどな……
「いいってことよ。な、旭」
「ああ。気にしないで、大丈夫です」
こういうときだけ、母さんと気が合うらしい。
にしても……どう声をかければいいのかまったくもってわからない。
こんな経験、したことねーし。
「話しかける内容はなんでもいい。美琴がやっぱ生きたいって思えるようなことを、とにかく言い続けるしかない」