だけど私が笑うよりも先に、篠宮くんに呼ばれた。


私はまた下を向いたまま、なにも言わない。



すると、篠宮くんは私の両頬を片手で挟み、無理やり私の顔を上げた。



「また泣きそうになったら俺に言え。絶対に守ってやる」



篠宮くんはそう言いながら、青いチェック柄のハンカチを私の額に押し付けた。



私がハンカチを受け取ると、篠宮くんは手を離した。



「………………ありがと………………」



久しぶりに出した声は、私が想像していたよりも小さかった。



「じゃ。ハンカチ返さなくていいから」



篠宮くんはそう言って、帰っていった。



なんか……ホントに神様みたいだったな。



「わ、悪かったな!」



半分怒りながら謝って、男の子たちも走って帰っていった。



篠宮くん、すごい。


あんな人に助けてもらえるなんて、私、幸せ者だなぁ……


私は篠宮くんに借りたハンカチで、汚れたところを拭く。



「返さなくていいって言ってたけど……洗って返そっ」



学校で誰かと話す機会ができて、心が踊った。



私はスキップをしながら家に帰った。