あの子は……こっちを見てない。
そもそもあの子の目、見えないけど。
こんなふうに避けられると、マジで傷つく。
「黒瀬、挨拶しろ」
「黒瀬旭です。よろしく」
少し微笑んでみれば、耳をつんざくような、女の声。
あの子は……耳塞いでんじゃん。
って、なんで俺、あの子ばっかり気にしてんだろ。
「それじゃ、黒瀬の席は……目無しの後ろだな」
そんなことを思いながら、俺は言われた席につく。
てか、教師もあの子のこと目無しって呼んでるとか……
もしかして、この学校であの子のこと名前で呼ぶヤツいなかったりして。
「よろしくな」
俺は横で止まって、笑顔で言った。
のに、見事に無視された。
俺は名前が知りたくて、机の上に置いてあるノートを見た。
「……!?」
そこには『沢田美琴』と、綺麗な字で書かれていた。
ほかのとこは落書きされてるけど。
にしても……
こいつがこの学校にいることに、驚きが隠せない。
こいつは、俺の……
っと、それはおいといて。