「どーなってんだよ……」
急いで美琴の家に向かうと、美琴たちはもうそこには住んでいなかった。
「旭」
玄関前で立ち尽くしていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
振り向くと、母さんが立っていた。
「……なに企んでたんだよ、クソババア……!」
美琴の転校と母さんは関係ないことくらい、頭では理解している。
だが、このタイミングで出てこられると、つい結びつけてしまう。
「あたしだって、こうなるなんて思ってなかったさ。あたしの計画では、美琴があんたに嘘の告白して、疑似恋愛を体験させた後、コテンパンに振るってなってたんだから」
嘘の、告白……
まあ、そんなことだろうとは思っていたが……
実際に聞くとかなりショックだ。
心のどっかで、ホントに好かれてるんじゃねーか、って思ってたわけだし。
「まさか、男性恐怖症の原因となる人物が出てくるなんて、想定外だったよ」
「ババアが余計なことすっから……俺は無駄に傷ついたじゃねーか」
「あんたの心の傷なんて、どーでもいい。今一番は、美琴に辛い思いをさせてしまったということだ。あいつは現実から逃れるために、里穂と知り合いがいない土地に引っ越したんだ。もう、過去と向き合ったりしないだろうな」