「なんだろう……すぐ戻るつもりだけど、黒瀬くん、まだ聞きたいこととかある?」
「少し」
嘘だ。
なにもない。
「わかった。ここで待っててね」
若宮は慌ただしく準備室を出ていった。
それにしても……
志賀結衣と本道寧々、か……
厄介者に仕掛けられたもんだ。
あいつらなら、なにをするかわかったもんじゃない。
となると、関わらないことが一番いい選択肢なのかもしれない。
あいつらへの仕返しを考えるよりも、若宮になにを聞くかを考えるほうが先決だろう。
だが、これ以上、俺に探れることはあるのか?
だいたいの詳しい話は、母さんに聞いたわけだし。
……黙って帰るか?
いや、それはマズいだろう。
自分で残ると言っておきながら、帰るのはプライドに反する。
そんなプライドなんて、持っていないが。