だから、俺は十四年前に飛んでそこであいつを倒そうとしていた。

姉さんを犠牲にしないために、未来の力を使ってこの手であいつを……。

憎き存在であり、姉さんと家族の敵でもある。

暗黒の妖精──“アク"をぼう

「姉さん……」

俺の頬に一粒の涙が伝った時、俺は目を覚ました。

最初に目に入ったのは、部屋の天井だった。

そして、部屋には誰も居ない。

「ここは、どこだ?」

『あら、目が覚めたの?』

「?!」

起き上がった時、枕元の近くに一人の妖精が居ることに気がつく。

「よ、妖精?!」

この時代に妖精が居るってことは、もしかして俺たちが行く予定だった過去に辿り着けたのか?!

「おい、お前!」

『お前なんて失礼な人ね、まずは貴方を助けてくれた雪南にお礼を言うべきじゃないの?』

「雪南?」

「起きて大丈夫なのか?」

すると、部屋の扉に雪南と呼ばれた女性が顔を覗かせていた。

「あんたが、雪南か?」

「そうだけど」

雪南は部屋に入って来ると、俺に水の入ったコップを差し出す。

「……何の真似だ?」

「喉乾いてるかと思って」

無理矢理コップを握らされたが、見ず知らずの人から貰ったものなど、安心して飲めるはずがない。

とりあえず机の上にコップを起き、俺は雪南に向き直る。

一応お礼は言わないと駄目だよな?

母さんから、助けてもらったらちゃんとお礼を言うように言われてたし。

俺は雪南に頭を下げる。