この状況は今の私にとって不利だった。

いくら私でも、スロウスとアクの両方を相手をすることになると、愛斗を連れて逃げるのは厳しい。

『さて、シアン。一緒に来てもらおうか』

『……嫌よ!』

私はアジュールに力を注ぐ。

剣が青い輝きを放ち私はアクを押し返す。

『ふーん、まだ新しい力を隠していたんだ。そのアジュール』

『愛斗とソレイユに何をしたの?!』

私はアクの言葉を無視し、怒声でアクに問いかける。

アクは微笑すると言う。

『眠ってもらってるだけだよ。闘えない奴がここに居ても無意味だからね』

アクは愛斗に手をかざす。

『なっ!』

「愛斗!」

アクは愛斗に向かって黒い玉を放つ。

私は、急いで愛斗の元に飛びその黒い玉を真っ二つに斬り捨てる。

しかしその時――

『きゃあっ!』

「シアン!」

黒い玉を真っ二つに斬り捨てたの爆風が私を襲う。

この威力は……、なんなの?!

私は、吹き飛ばされないようになんとか耐える。

『へぇ、それを耐えるんだね』

『アク……、愛斗を狙ったこと……許さないよ!』

私の中に怒りの感情が芽生え始める。

『じゃあ、俺から一つ提案があるよ』

『なに?!』

スロウスはアクの隣に降り立つ。

『シアン、お前が俺たちと来ればその男は見逃してやる』

『なっ!』

私は自分の耳を疑った。

あのアクが見逃すと口に出したからだ。

だけど、そんな言葉は信じられない。

十年前も、アクは『見逃す』と言って、結局は私とソレイユを殺そうとしたんだから。

『そんな言葉、信じられるわけないでしょ!』

『嘘じゃないよ。君が俺たちと来るって言ったら、スロウスの術を解いてあげる』

『スロウスの術を?』

アクは頷くと愛斗に指をさす。

『眠らせてると言っても、それはスロウスの術だ。スロウスが死ぬか自分で術を解かない限り、その男が目覚めることなんてない』

『そんな……』

じゃあ、私がアクに付いていけば、愛斗の術を解くことは出来るの?

『俺は、君の為に詳しく丁寧に説明してあげたんだ。シアン、俺は本気だよ?』

アクは私に指をさす。

『俺は、君の力が欲しいんだ。君は世界を変える力を持っているんだから』

『っ……!』

「シアン……」

どうすればいいの……?